【令和8年最新】中小企業診断士1次試験「経営法務」が実務で活きる|M&A・知財・下請法・事業承継の現場で武器になる知識の使い方
中小企業診断士の1次試験7科目のうち、経営法務は「合格のために必要だが、合格後は使わない」と語られがちな科目です。会社法・知的財産法・契約法・独占禁止法・下請法と射程が広く、暗記負担も重いため、受験対策の世界では難所の一つとして扱われています。しかし、実際の中小企業支援の現場に立ったとき、最も「経営者の意思決定に直結する論点」を提供してくれる科目こそ、経営法務です。
M&Aによる事業承継、特許・商標出願による無形資産戦略、下請法を踏まえた取引価格の見直し、遺言・遺留分への対応――。経営課題の背後には例外なく法律論点が潜んでおり、その論点を整理し、弁護士・税理士・弁理士へとつなぐ「橋渡し役」を担えるかどうかが、中小企業診断士の付加価値を大きく左右します。令和元年(2019年)から令和7年(2025年)にかけての過去問は、まさにこの実務応用の縮図と読み解くことができます。
本記事は、令和に入ってからの経営法務の過去問を素材に、「学んだ知識をどう現場で使うか」を体系的に整理します。資格取得後すぐに支援案件を持ちたい方はもちろん、既に独立されている診断士が顧問先への提案力を引き上げる際にも参考になります。なお、本記事を執筆する壱市コンサルティングは、認定経営革新等支援機関として全国の中小企業診断士パートナーと連携しながら、補助金・経営・事業承継の支援を実践しています。
経営法務が「実務で最も応用範囲が広い科目」である理由
経営者の意思決定の背後には、必ず法律論点が潜んでいる
中小企業の経営者が直面する重要意思決定の多くは、「何らかの法律行為を伴う場面」です。新規取引先との契約締結、株主構成の変更、知的財産の創出と保護、後継者への自社株移転、海外展開、従業員との労務関係、消費者向け広告の表示、これら全てに法務の判断が組み込まれています。
経営者がこうした意思決定をする際、最初から弁護士や税理士に相談するケースはむしろ稀です。多くの場合、経営者は「これは法的にどう整理されるのか」「どんなリスクがあるのか」を整理しないまま、経営課題と一体として中小企業診断士に相談します。診断士が経営法務の知識を持っているか否かで、その後の支援の質は大きく変わります。
他士業との「橋渡し役」を担えるのは診断士だけ
弁護士は法律問題のスペシャリスト、税理士は税務のスペシャリスト、弁理士は知的財産のスペシャリストです。しかし、経営課題は単独の論点として現れることは少なく、「事業承継=株式譲渡+税務+遺留分+自社株評価」「商品開発=商標+意匠+契約+下請法」のように複合的に絡み合います。
この複合論点を整理し、適切な専門家にバトンを渡せる立場が中小企業診断士です。経営法務の学習で得られる「広く浅い」知識は、まさにこの橋渡し役を担うための土台として機能します。深い専門性は他士業に委ねるとしても、論点を識別する目を持つこと自体が極めて高い実務価値を持ちます。
POINT|経営法務は「資格試験のために覚える知識」ではなく、「現場で経営課題を法的に整理するためのスクリーニングツール」と捉えると、その実務価値は飛躍的に高まります。
会社法から学ぶ「中小企業のガバナンスと組織再編」
令和に入ってからの経営法務は、会社法分野で「組織再編」「事業承継」「ガバナンス」を中心に出題が続いています。これらは中小企業診断士が直接支援機会を得る領域そのものです。
事業譲渡と会社分割の選択(令和7年 第6問)
令和7年(2025年)の第6問では、X社のA事業部門をY社に譲り渡す場面で、「事業譲渡」と「会社分割」のどちらを選ぶかが論点になりました。これは試験用のケーススタディではなく、日々の中小M&A実務で必ず出てくる選択肢です。
診断士が実務で関わるのは、「経営者からM&Aの相談を受けたとき、どちらの方式を勧めるか」の最初の論点整理です。取引先の数が多いサービス業や、顧客契約・ライセンスを多く抱える業態では、個別同意のコストを避けるために会社分割を検討することがあります。一方、譲渡対象が小さく、債権者保護手続のコスト負担を避けたい場合は事業譲渡が選ばれます。
この入口の整理ができるだけで、その後に紹介する弁護士や税理士の検討は格段に効率化されます。最終的な実行は専門家に委ねますが、「方向性の議論を経営者と並走できる」ことが診断士の付加価値です。
特別支配株主の株式売渡請求(令和6年 第7問)
令和6年(2024年)の第7問は、70歳を超えた経営者がY社にX社の株式全部を譲渡したいが、一部の株主が応じないかもしれない、という典型的な事業承継場面でした。議決権の10分の9以上を持つ特別支配株主は、他の株主全員に対し、保有株式の売渡しを請求できます(会社法第179条)。
これは机上の制度ではなく、中小M&Aの仕上げで頻繁に使われる仕組みです。少数株主が散在している同族会社では、買手企業の側から「100%株式取得を完了させてほしい」と求められることが一般的で、その際に特別支配株主の株式売渡請求が活用されます。診断士はこの制度の存在を知っているだけで、「少数株主の処理は司法書士・弁護士と連携してこの手続でクリアできます」と経営者を安心させることができます。
POINT|事業承継・M&Aの初期相談で経営者が最も不安に思うのは「少数株主にどう対処するか」です。特別支配株主の株式売渡請求、株式併合によるスクイーズアウト、種類株式の活用といった選択肢を整理して示せる診断士は、それだけで信頼を獲得します。
譲渡制限株式・株主総会運営・監査役制度
令和7年の第1問〜第4問では、株主総会、取締役会、監査役、譲渡制限株式が連続して問われました。これらは中小企業のガバナンス支援の基本論点です。中小企業診断士が顧問契約や経営革新計画支援、補助金支援などで関与する際、「議事録の作り方」「定款の見直し」「機関設計の妥当性」に関する質問は日常的に発生します。
特に同族会社では、株式の譲渡制限を設けていない、株主名簿が整備されていない、株主総会が形式的にしか開催されていない、というケースが少なくありません。事業承継の検討段階で初めて株主構成の不整合が判明することもあります。診断士は法務局や登記事項証明書、定款を入口にした初期スクリーニングを行い、「適切な機関設計と整備状況」を経営者と共に確認するところから入ります。
知的財産法から学ぶ「中小企業の無形資産戦略」
中小企業の競争力の源泉が「目に見えるもの」から「目に見えないもの」へとシフトする中、知的財産の取り扱いは経営戦略そのものになっています。経営法務の知財分野は、令和に入ってから出題比重が一貫して高く、特許・実用新案・意匠・商標・著作権・営業秘密の各論点が毎年問われています。
職務発明と発明報酬規程(令和7年 第9問・令和6年 第17問)
研究開発型の中小企業では、社員が業務の一環で発明をすることが日常的にあります。職務発明制度は、こうした発明の権利関係を整理する仕組みです。特許を受ける権利を使用者に原始的に帰属させる契約や勤務規則を整備していなければ、発明の権利は従業者に帰属し、企業はあとから譲渡を受ける必要が生じます。
中小企業の現場では、職務発明規程が整備されていないまま運用されているケースが少なくありません。診断士が関与する場面では、ものづくり補助金で開発した新製品の特許出願や、製品認定取得を機に発明報酬規程の整備を提案する、といった「補助金支援とセットの法務整備」として価値を発揮します。
立体商標・動き商標と店舗内装の意匠登録(令和7年 第12問・令和6年 第13・15問)
令和に入ってからの過去問では、ワインボトルの容器形状を立体商標として登録できるか、文字を含んだ動き商標は登録できるか、店舗の内装や建物の外観は意匠登録の対象になるか、といった「新しい類型のブランディング」が立て続けに問われています。
これらの知識は、地方の老舗食品メーカーや飲食チェーンの支援で直接活用できます。「長年使い続けた容器形状は登録できる可能性があります」「内装そのものが意匠登録できます」と一言伝えるだけで、経営者の頭の中で「ブランドは法的に守れる」という概念が初めて立ち上がります。具体的な出願は弁理士に委ねますが、その入口を作るのが診断士の役割です。
不使用取消審判で商標を取り戻す(令和7年 第16問)
新商品にどうしても使いたい商標が他社に既に登録されている場合、継続して3年以上不使用であれば、不使用取消審判の請求によって取消しを目指せます。利害関係を要しない、誰でも請求できるという特性も、新規参入者にとっては非常に大きな実務的価値があります。
この知識は、新商品開発を進める中小企業や、新ブランドで創業する個人事業主の相談で具体的に役立ちます。商標調査の結果「既登録のため使えない」と諦めてしまう前に、「相手が実際に使っているか」を確認する一段階を挟むだけで、ブランディング戦略の選択肢が広がります。
著作権の譲渡特掲条項と業務委託契約(令和7年 第15問)
外部のイラストレーターやデザイナーに制作物を発注する場面で、契約書に「著作権法第27条(翻案権)および第28条(二次的著作物の利用に関する権利)を含む全ての著作権を譲渡する」と特掲しなければ、これらの権利は作者に留保されると推定されます。これは多くの中小企業が見落としている重大ポイントです。
パンフレットやウェブサイトのイラストを発注した中小企業が、後日「同じイラストを社内研修動画にも使いたい」「キャラクターを少しアレンジして商品化したい」と考えた際、契約書に特掲条項がなければ作者の許諾を改めて取る必要が生じます。診断士がデザイン外注の契約条項を最初にチェックできれば、こうした「後から発生する権利処理コスト」を未然に防げます。著作者人格権が一身専属(譲渡不可)であることも、合わせて経営者に伝えるべき重要論点です。
注意|「著作権を譲渡する」と書いただけでは翻案権と二次的著作物の利用権は譲渡されません。これは令和7年に問われた論点であり、中小企業の業務委託契約書に頻発する落とし穴です。
営業秘密と不正競争防止法(令和6年 第12問・令和7年 第11問)
食品メーカーが新製品の製法を特許出願せず秘密のまま守るとき、その情報を保護するのが営業秘密の制度です。営業秘密として保護を受けるには、①秘密管理性、②有用性、③非公知性の3要件を満たす必要があります。
中小企業のレシピや顧客名簿、製造ノウハウ、独自の業務マニュアルは、いずれも有用かつ非公知の情報になり得ますが、秘密管理性が満たされていないために営業秘密として保護されない事例が頻発しています。診断士は、社内文書管理、アクセス権限の設定、秘密保持誓約書の整備といった運用面の助言を通じて、無形資産の保護に直接貢献できます。
下請法・取引法から学ぶ「適正な取引関係の構築」
下請法における60日支払義務と買いたたき(令和7年 第7問)
令和7年の第7問は、下請事業者が「当月納入分を翌月納入分として扱ってほしい」と求められたケースを題材としていました。下請法では納品物受領日から60日以内のできる限り短い期間内に下請代金を支払う義務があり、両者の合意があってもこの規制は外せません。
さらに、原価コスト上昇下での値上げ交渉について書面・電子メール等で理由を示さずに据え置く行為は、「買いたたき」に該当する可能性があります。価格交渉促進月間(毎年3月・9月)と公正取引委員会・中小企業庁の指導強化を背景に、近年は下請法違反の摘発が大幅に増えています。
補足|令和6年(2024年)以降、中小企業庁では「価格転嫁の状況に関する調査」を継続実施しており、下請事業者からの申告は親事業者の指導・公表につながります。診断士は下請事業者の側に立って、価格転嫁交渉の準備(原価データの可視化、書面交渉履歴の作成)を支援できます。
契約不適合責任と請負契約のリスク(令和6年 第20問・令和7年 第20問)
2020年の改正民法施行以降、それまでの「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に変更され、買主には追完請求権・代金減額請求権・損害賠償請求権・契約解除権が認められるようになりました。請負契約では、注文者は仕事完成前であればいつでも損害を賠償して契約を解除できます。
建設業・製造業・IT受託開発業の支援において、これらの知識は「契約書のひな型を見直す出発点」になります。古いひな型のまま「瑕疵担保責任」と書かれた契約書を使い続けている中小企業も少なくありません。診断士は法律事務所と連携しながら、契約書の現代化を支援できます。
経営者保証と保証契約(令和7年 第18問)
事業のために負担した貸金債務を主たる債務とする保証契約では、保証人になろうとする者が「保証債務を履行する意思を公正証書で表示」する必要があります。ただし、主たる債務者が法人である場合の代表者や、個人事業主の共同事業者等は例外とされます。
この論点は、金融機関融資の現場で日常的に登場します。経営者保証ガイドラインの普及と、金融庁の経営者保証改革プログラムの進展により、「経営者保証に依存しない融資慣行の確立」が政策的に推進されています。診断士は経営改善計画策定支援や財務コンサルティングの中で、保証契約の有無と妥当性を整理する役割を担えます。
民法・相続法から学ぶ「事業承継支援の基礎」
遺言の方式と撤回(令和7年 第21問)
遺言は、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3方式があり、遺言者はいつでも遺言の方式に従って遺言の全部または一部を撤回できます。遺言能力は15歳に達した者に認められます(民法第961条)。事業承継の現場では、自社株を後継者に集中させる遺言の作成が中核的な対策の一つとなります。
同族会社のオーナー経営者が「後継者に自社株を集中させたい」と考えても、何の手当てもしないまま相続が発生すると、自社株は法定相続分に従って分散します。診断士は事業承継支援の入口で、「遺言書の有無」「自社株の評価額」「後継者の確定」を整理し、必要な専門家(公証人・税理士・弁護士)へとつなぎます。
遺留分侵害額請求権の現代的論点(令和7年 第22問)
遺留分は配偶者・子・直系尊属に認められ、兄弟姉妹には認められません。遺留分侵害額請求権は、相続開始および侵害を知った時から1年以内に行使しなければ時効によって消滅します。裁判外でも行使可能ですが、後の証明のために内容証明郵便で行うのが通例です。
事業承継において遺留分の問題が顕在化するのは、「後継者に自社株を集中させた結果、他の相続人の遺留分を侵害してしまう」場面です。経営承継円滑化法に基づく除外合意・固定合意の活用、生命保険の活用、生前贈与の活用といった対策は、いずれも遺留分の論点を理解しているからこそ提案できる支援メニューです。
共有持分の処分と単独行使(令和7年 第17問)
共有不動産は中小企業の事業承継で頻繁に問題化します。事業用不動産が先代の兄弟姉妹で共有のままになっている、駐車場が複数の親族で共有されている、といった状況は珍しくありません。共有者は自己の持分を他の共有者の同意なく第三者に譲渡できる一方、共有物全体の処分や賃貸借契約の解除には全員の同意が必要です。
2021年改正民法(2023年4月施行)で共有制度は大きく見直され、所在不明共有者がいる場合の対応手続が整備されました。診断士は、事業用資産の整理を伴う事業承継支援で、こうした共有関係の整理を弁護士・司法書士と連携しながら進める入口を担えます。
マーケティング関連法から学ぶ「攻めの広告の守り」
ステルスマーケティング規制(令和6年 第22問)
令和5年(2023年)10月、景品表示法第5条第3号に基づく告示によって、いわゆるステルスマーケティング(広告であることを隠すこと)が規制対象となりました。インフルエンサーへの依頼で広告である旨を表示しない、自社社員による匿名レビューを装う、こうした行為は事業者の責任として景表法違反となります。
この規制を踏まえた広告運用の見直しは、近年の中小企業のマーケティング支援において必須項目になっています。SNSマーケティング、口コミ施策、アフィリエイト、インフルエンサー起用、いずれも「PR表示・広告表示の徹底」を運用ルールに組み込む必要があります。診断士は、マーケティング戦略の立案段階からこの論点を組み込むことで、事後的なリスクを排除できます。
消費者契約法と約款の整備(令和6年 第23問)
事業者の軽過失の場合の損害賠償責任を全部免除する条項、重過失の場合の責任を一部免除する条項は、消費者契約法により無効となります。BtoCサービスを提供する中小企業の利用規約・約款で、こうした問題条項が残ったままになっているケースは少なくありません。
特に、ECサイト、サブスクリプションサービス、教育サービス、フィットネスサービスなど、近年急成長している業態の中小企業では、「規約の整備と見直し」が常に必要です。診断士は弁護士と連携しながら、規約の現代化と消費者契約法対応を支援できます。
不正競争防止法とブランド保護(令和7年 第11問)
著名表示の冒用は混同を要件としません。商品等表示には役務商標も含まれ、ドメイン名の不正取得・使用も不正競争に該当します。中小企業が長年使ってきた屋号・商号・ロゴが第三者によって類似使用された場合、商標登録がなくとも周知性・著名性があれば不正競争防止法による保護を受けられます。
老舗のブランド保護、地域名産品の保護、模倣品対策において、不正競争防止法は「商標登録の隙間を埋める」役割を果たします。診断士はブランディング戦略を策定する際、商標登録と不正競争防止法の両輪で保護設計を検討できます。
国際取引法・独占禁止法から学ぶ「越境ビジネス支援」
英文契約の準拠法・仲裁条項(令和7年 第8問・令和6年 第19問)
海外取引を行う中小企業の契約書では、準拠法(Governing Law)、紛争解決手続(Dispute Resolution)、不可抗力(Force Majeure)、分離可能性(Severability)、完全合意(Entire Agreement)、権利放棄(No Waiver)といった一般条項が定型的に組み込まれます。
仲裁条項は、紛争を「公開の法廷ではなく、専門家による仲裁」で解決する仕組みです。仲裁判断は当事者を法的に拘束し、原則として上訴できません。日本商事仲裁協会(JCAA)の仲裁規則を選択することで、東京で日本語または英語の仲裁手続を行うこともできます。国際取引の経験が浅い中小企業ほど、契約書の一般条項を読み飛ばす傾向がありますが、ここを一読できる診断士は重宝されます。
独占禁止法の課徴金減免制度(令和6年 第9問)
価格カルテルや入札談合、再販売価格の拘束行為は、独占禁止法違反として課徴金の対象となります。課徴金減免制度(リニエンシー)は、違反企業が自主的に申告することで課徴金を減免する仕組みで、公正取引委員会による調査開始前の最初の申請者には全額免除、調査開始後でも申請順位に応じた減免率が適用されます。
中小企業の経営者が「業界の慣行に従っていただけ」と認識している取引慣行が、実は独占禁止法違反のリスクを抱えているケースは少なくありません。診断士は業界団体への加盟状況、価格情報の交換、取引先との価格調整といった論点を経営者と整理し、必要に応じて専門家への相談を勧めます。
経営法務の知識を「武器」に変える3つのスキル
経営法務で学んだ知識を実務で活かすには、「知識を持っている状態」から「使える状態」への転換が必要です。現場で頼られる診断士は、以下の3つのスキルを身につけています。
①論点識別力:経営課題を法的論点に分解する
経営者が語る「困りごと」を、会社法・知財法・契約法・労働法・税法のどの論点として整理できるか。この識別ができるかどうかで、その後の支援の精度が決まります。経営法務の学習は、論点の「箱」を頭の中に持つ訓練と考えると、その実務価値が見えてきます。
②専門家連携力:適切な士業に適切なタイミングで橋渡しする
弁護士、税理士、弁理士、司法書士、社労士、行政書士――。中小企業の課題は複数の専門家にまたがります。診断士は、どの論点をどの専門家に渡すべきかを判断し、論点整理メモを携えて経営者に同行することで、相談の質を劇的に高めます。
③経営判断接続力:法的論点を経営判断の言語に翻訳する
経営者は法律家ではありません。「この条文に基づき〜」と語っても響かないことが多く、「この論点を放置すると、5年後の事業承継時にこういうコストが発生します」「契約書を整備すれば、競合との価格競争を回避できます」のように、経営判断の言語へと翻訳する力が問われます。経営戦略・財務・組織論と接続できる診断士だからこそ、この翻訳ができます。
経営法務を実務で活かすための5つのポイント
よくある質問
❓ Q1.経営法務の知識は、診断士登録後すぐに使えますか。
A1.使えます。1次試験合格レベルの知識でも、論点識別力としては十分に機能します。経営者の相談を聞いた段階で「これは会社法の組織再編の話」「これは下請法の買いたたきの話」と分解できれば、その後の対応の質は大きく変わります。深い専門性は弁護士・弁理士に委ねつつ、論点整理と専門家連携の起点として診断士は機能できます。重要なのは、経営法務を「合格後に忘れる科目」ではなく「実務で使い続けるフレームワーク」と位置づけることです。
❓ Q2.M&A支援の経験がない診断士でも、経営法務の知識で事業承継相談に対応できますか。
A2.対応できます。M&A・事業承継の入口で経営者が知りたいのは、「どの方式が自社に向くか」「少数株主にどう対応するか」「税務上の影響はどうか」といった全体像です。事業譲渡と会社分割の違い、特別支配株主の株式売渡請求、遺言と遺留分、共有持分の処理――これらの基本論点を整理して示すだけで、経営者の意思決定は前に進みます。実行段階では弁護士・税理士・M&Aアドバイザーと連携することで、経験不足を補えます。
❓ Q3.知財の支援は弁理士に任せるべきで、診断士が関わる余地はないのでは。
A3.実態は逆です。中小企業が「弁理士に相談する前に知財戦略を整理する」段階で、診断士は大きな役割を果たします。商標を取るべきか・取らないべきか、立体商標と意匠のどちらを選ぶか、職務発明規程はどう整備するか、営業秘密として管理するか・特許出願するか――。これらは経営戦略の問題であり、弁理士は出願実務のスペシャリストですが、戦略全体の設計には踏み込まないケースが多くあります。診断士はこの設計部分を担えます。
❓ Q4.下請法は親事業者・下請事業者のどちらの支援で使えますか。
A4.両方で使えます。下請事業者の側では、価格転嫁交渉の準備(原価データの整理、書面交渉履歴の作成、価格転嫁促進月間に合わせた申入れ)を支援します。親事業者の側では、取引コンプライアンス体制の構築(発注書面の整備、支払サイトの見直し、価格据置時の理由書面化)を支援します。下請法は親事業者を規制する法律ですが、その知識は両側の支援において価値を持ちます。
❓ Q5.業務委託契約のチェックは、診断士が引き受けてよいのですか。
A5.契約書の作成・修正そのものは弁護士業務(弁護士法第72条)に該当する可能性があり、診断士単独で受任すべきではありません。診断士の役割は、契約書の論点を経営目線で整理し、「この条項は不利な可能性があるので弁護士に相談すべき」「ここに著作権の譲渡特掲条項が必要」といった指摘を行うことです。経営判断と法律実務の橋渡しに徹することで、診断士は安全かつ高い付加価値を提供できます。
❓ Q6.補助金支援と経営法務はどのように接続しますか。
A6.緊密に接続します。ものづくり補助金で開発した新製品の特許出願・商標出願、事業再構築補助金後の事業承継、省力化投資補助金における賃上げ要件と労務契約、新事業進出補助金における取引契約整備など、補助金プロジェクトは法務論点を必ず伴います。補助金支援を入口として、その後の知財整備・契約整備・事業承継支援へと展開する流れは、診断士の継続的な収益基盤を構築する王道のひとつです。
❓ Q7.国際取引や英文契約のチェックは、ハードルが高いのではないですか。
A7.診断士単独で英文契約全体を翻訳・修正する必要はありません。求められるのは、準拠法、仲裁条項、不可抗力、分離可能性、完全合意、権利放棄といった一般条項の意味を理解し、契約全体の構造をクライアントに説明できる力です。専門的な交渉や修正は国際法務に強い弁護士に委ねますが、初期スクリーニングと整理の段階では診断士が十分に対応できます。
❓ Q8.ステルスマーケティング規制は、診断士の支援領域として実際に増えていますか。
A8.増えています。SNSマーケティング、インフルエンサー起用、口コミ施策を行う中小企業が増える一方で、PR表示の徹底や運用ルールの整備が追いついていない事業者が多く、診断士による広告コンプライアンス支援のニーズは高まっています。マーケティング戦略の立案段階で景表法対応を組み込むことで、後から発生する炎上リスクや行政処分リスクを未然に防げます。
❓ Q9.経営法務の知識は、AI時代にも価値を維持できますか。
A9.むしろ価値は高まります。AIは条文や判例を高速で参照できますが、「経営者の言葉から法的論点を識別する」「経営判断の文脈に翻訳する」「複数の士業へと橋渡しする」といった統合的な判断は、依然として人間の専門家の役割です。AIを使いこなしながら、論点識別力・専門家連携力・経営判断接続力を発揮できる診断士の価値は、今後も継続的に上昇します。
❓ Q10.独立後すぐに、経営法務に関わる案件を獲得するにはどうすればよいですか。
A10.最も現実的な方法は、既存の支援機関やコンサルティングファームのパートナー診断士として案件に関与することです。実際の案件を通じて、経営法務の知識を実務に変換する経験を積みながら、自身のクライアント基盤を構築できます。壱市コンサルティングでは、補助金支援を中心としつつ、事業承継・知財・組織再編に関わるパートナー診断士の連携を進めています。独立後の案件獲得と実務経験の蓄積を両立したい方は、ぜひご相談ください。
パートナー診断士として壱市コンサルティングで実務経験を積む
壱市コンサルティングは、認定経営革新等支援機関として、補助金支援を中核に事業承継・組織再編・知財整備・契約整備など、経営法務に密接する支援を全国の中小企業に提供しています。これまでの累計採択実績は100件超・採択総額15億円超に達し、現在も多くの案件を進めています。
パートナー診断士として連携いただく中小企業診断士の方には、補助金案件を入口に、その後の知財整備・契約見直し・事業承継支援へと展開する継続的な支援機会を提供しています。経営法務で学んだ知識を実務で活かしたい方、独立後の案件基盤を作りたい方、組織再編・事業承継の専門性を高めたい方を歓迎しています。
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ものづくり補助金・新事業進出補助金・省力化投資補助金・小規模事業者持続化補助金など、主要補助金の事業計画策定とレビューを担当します。採択予測スキル等の社内ツールも全パートナーに提供します。
🔄 事業承継・組織再編支援
事業譲渡・会社分割・株式譲渡を含むM&A支援、特別支配株主の株式売渡請求を活用したスクイーズアウト、遺言・遺留分の論点整理を、弁護士・税理士・司法書士との連携体制で進めます。
🛡️ 知財・契約整備支援
商標・意匠・特許の出願戦略、職務発明規程の整備、業務委託契約の見直し、下請法対応、消費者向け規約の整備を、弁護士・弁理士と連携して支援します。
🤝 ナレッジ共有とAI Ops
壱市コンサルティングが内製する各種社内スキル(採択予測・申請書ドラフト生成・採点ツール等)をパートナー診断士にも提供し、AIを活用した次世代の支援スタイルを共に構築していきます。
経営法務で学んだ知識を「現場で動く力」に変え、信頼される支援者として歩み出しませんか。
こんな方とご一緒したいと考えています
- ✅ 中小企業診断士として独立または兼業を検討している方
- ✅ 補助金支援を入口に経営支援の幅を広げたい方
- ✅ 事業承継・M&A・知財整備など法務密着分野の経験を積みたい方
- ✅ チームで案件に取り組み、専門家ネットワークと協働したい方
- ✅ AI・自動化を取り入れた次世代型の支援スタイルに関心がある方
壱市コンサルティングは、令和8年(2026年)も中小企業診断士の皆様と共に、中小企業支援の最前線を歩んでまいります。